Ｄｒ.タニッシュは、銘醸畑ドクターを所有し、ハイクォリティーなワインを産み出す造り手です。モーゼル中流域で際立った存在だけに、常に世間から注目を集めています。1980年代初頭、未亡人タニッシュ婦人がオーナーになった頃から、明確にそれまでより、味を柔らかくなったように思います。酸を控え目にした、この味構成だと寿命が短くなる…と多くの人が失望感を抱いたのです。が、1990年代に入って、その熟成を確認した時、十分に熟成すると判断できる結果でした。従って90年代半ばからタニッシュのワインは値上がりしました。が、90年代終盤、また岐路に立つのです。相続により、畑が二分されたのです。同じ畑・同じ“タニッシュ”の名で、二種のワインが発売される事になりました。分家はラベル上部に「…Muller Burggraef」と書いています。一方本家は、従来通りのラベルです。…という歴史を見ながら、それから13年を経た、この2012年、数々の障壁を乗り越えてきたタッシュが、非常に良い天候に恵まれて造ったの金字塔のようなワインです。グラスに注げば、薄いながらもまさに黄金の輝き、香はグレープフルーツやレモン、蜂蜜などを感じさせてくれます。ゆっくりと空気に触れさせていいると、より多くの香を要素が湧き上がってきます。明確で縁取りされたような酸、そしてリースリングの典型的な美しさが語りかけてくるように感じるのは、天候が素晴らしかったこと、畑が秀逸であること、何よりも造り手の技量が高いことによって辿り着いた境地だと思います。設定温度は９℃付近で。相応以上に甘さがあるので、ワイン単体か、甘みの少なめなフルーツなどと共にお召し上がりください。